大流行の「企業価値を高めます」宣言

ウェブ制作会社、パンフレット制作会社、このあたりのいわゆる「クリエイティブ系」で定番なのが、

「御社の企業価値を高めます」

という謳い文句。

一見なんかやってくれそうですが、企業価値って何なのでしょうか?

「パンフレットを新しくしたら企業の価値が高まる?」

「ホームページを刷新したら企業の価値が変わる?」

なさそう…ですよね。

企業価値ってナニ?

会社の外観

結構使い古されてきた「企業価値」って一体なんでしょう。

「企業価値を高めます」と言っている会社自体がそれを説明できない感じもしますね。

では、wikipediaの説明を引用します。

企業価値(きぎょうかち、又は事業価値、エンタープライズ・バリュー)とは、企業が持つ有機的一体としての事業の価値を金額で表したものをいう。

法人の事業実体がつかみにくく、かつ、営む事業の特性に応じた評価が必要となることから、企業価値を一義的に決めることは非常に難しい。

だそうです。「事業の価値を金額で表したもの」というのがわかりました。ではその金額とはどのように算出するのか?

なお、一般的に企業価値の計算アプローチ手法としては過年度の蓄積を基礎とするコスト・アプローチ(清算価値法、修正簿価純資産法など)、将来の収益性を基礎とするインカム・アプローチ(収益還元法、ディスカウント・キャッシュ・フロー法など)、実際の売買市場で成立している類似企業の株価を基礎とするマーケット・アプローチ(類似業種比準法、マルチプル法など)の3種類が挙げられる。

なんだか難しい言葉が並んでいますが、ようは「企業が持つ価値を金額で表したもの」ということですね。企業の価値、ですから。

株価の算出根拠となるのが企業価値、と言うところですね。

となると、巷のウェブ会社などが言う「企業価値」とは何でしょうか。

たぶん「その企業の存在意義」みたいなところでしょう。略して存在価値を高める、みたいな。なので、企業価値。随分本来の意味からは離れました。本来の意味を知らずに使ってそうです。

ウェブサイトやパンフレットが「企業価値を高める効果があると言えなくはない。いや、効果があると言えるだろう」という曲解がここに生じています。

「〜とは言えなくない」という商法

はてなマーク

企業の存在価値を高めることを、本来の言葉の意味とは異なるにも関わらず「企業価値」とし、ホームページやパンフレットが「貢献しないとは言えなくない」と曲解を重ねる論法。金だけがかかる、意味のないブランディングを売る商売です。

ウェブ業界やコンサル、ブランディング企画会社やパンフレット制作会社などの「広報物制作」の会社がよく使う「〜とは言えなくない」という手法。

確かに今日、企業が商売をするうえで、ウェブサイトは重要です。しかしそれを作っても「企業の価値」が高まったどうかは誰も検証できません。つまり、責任を取る必要はないんですね。

「広報物」が会社の価値を高めてくれるならば、どこの会社も高まっているはずで、こういった論拠に乏しい理論を大げさに「企業価値が高まる」と言い切って売るというのも、なかなか滑稽な話です。

企業価値はどうすれば高まるのか?

企業価値が年々高まっていく様子

企業価値とはその会社の事業の収益性を高め、消費者だけでなく従業員、その家族、取引先に至るまで有益な循環構造を作ることにあると考えます。

その努力やこだわり、そして成果を広報物にしたためて、世間や株式市場にアピールする。そこまでが第一段階。

次のステップとして、市場やステークホルダーからの実際の「評価」はどうか。株価に数字でそれが現れるか。実際の職場はブラックでなく、退職者やトラブルは少なく抑えられているか。さらにSDG’sを始めとした社会的な企業活動を継続的に出来ているか。ここが第二段階になるでしょう。

そのような本質的な視点から考えれば、いかに「パンフレットを作って企業価値をあげよう」「ホームページを作って企業価値を上げよう」というのが、広報物を作るという「手段」をさも神通力でもあるように見せている営業文句であるかがわかると思います。「いい人になりたい」と言いながら内面を磨く努力をせず「高い服を着ればいい人に見えるだろう」と考えるようなものですね。

広報物を作りたいだけのポジショントーク

「NG」と言うサラリーマン

もし御社にどこかの営業マンが現れて「ウェブサイトを刷新することで企業価値を高め…」「会社案内やパンフレットは企業の価値を…」と言い始めたら。あるいはその会社がウェブサイトで恥ずかしげもなくそれを語っていたら。

相手にしないほうがいいでしょう。

広報物を作りたいだけの、ポジショントークですから。

いざ、こういう営業やプレゼンを会社の会議室で受けるとその気になってしまうこともあると思いますが、そういうときはこの記事を思い出してくれたら。ちょっと冷静になれると思います。

手書きで、コンビニでコピーしたようなチラシでも人気のお店には行列ができるように、ホームページやパンフレットを作っただけで「企業価値」を高めることはなりません。あくまでサポート、多少の手伝いにはなりますが、やっぱり大事なのはその会社の「中身」です。

神頼みや起死回生で広報物を刷新しよう、とは思わないでください。

そんなことで会社が変われるならば、世の中の会社の多くが倒産などせずに済んでいるわけですから。