発注書ってどんな位置づけ?
見積書に発注書、注文書や契約書、納品書などなど、ビジネスでのやりとりにはさまざまな書面が飛び交いますね。
そのなかで「発注書」とはどんなポジションなのでしょう?
今回は発注書とは何か、使う際の注意点、そして契約書とのちがいなど網羅的にかつ優しく解説していきます。
まずは、その定義についてカンタンに整理しますね。
発注書とは?
以下の3点が特徴となります。
大事なところなので、ざっくりとつかんでおきましょう。
①発注の「意思」を示す書面
発注側が受注側に向けて「仕事を依頼します」という意思を文書で示すための書面。口約束ではなく書面で残すことで発注した証跡を残す役目がある。
②注文書と同じ効果
業界によっては「注文書」とも呼ばれる。役目としては同じと考えておいてOK。強いて言えば、注文書のほうが「◯◯個を発注」など数値で記載できるモノ、発注書は例えばホームページ制作など「作業」を対象に用いられる。
③契約書ではないが例外も
これが本記事の主題のひとつにはなるので、記事上において解説していきます。契約としての効力を持つ発注書とそうでないパターンがあるというのが、ややこしいところ。
発注書にはさまざまなタイプがある
発注書と言っても、さまざまなビジネスの業界でその役割は異なってきます。
法的効力がなくカンタンに解除できるもの、あるいはできないもの。諸々決して安易には扱えないシロモノですので、広報媒体を作ろうと思っている社長さんやご担当者の方は覚えておきましょう。
まずは、一般的に使われる、簡易的な発注書の特徴です。
発注書は「原則、契約書ではない」
先述のとおり、発注書は「相手方に『発注します』という『意思』を表示する書面」。
言い換えれば、発注者の意思を表示しているだけのいわば「一方的な書面」なんですね。
つまり原則、契約書とは異なります。
もし、書いてしまって先方の会社に送ってしまっていても、その「意思」は取り消せます。あくまで「片方の意思表示」だからですね。
しかし…「例外」があるので要注意。
では、気をつけるべき点とはどのようなものなのでしょう?ここが大事な箇所です。
【要注意】発注書が契約書となる「3パターン」とは?
実は発注書が契約書になってしまう、気をつけるべき主要パターンは「3つ」。ある種「トラップ」とも言えるので抑えておくと良いです。
では、国税庁のサイトに掲載されている「発注書が契約書として扱われてしまうパターン」を見てみましょう。
以下、まずは引用転載しますが、あとで要約もしますのでご安心を。
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(1) 契約当事者の間の基本契約書、規約又は約款等に基づく申込みであることが記載されていて、一方の申込みにより自動的に契約が成立することとなっている場合における当該申込書等。ただし、契約の相手方当事者が別に請書等契約の成立を証明する文書を作成することが記載されているものは除かれます。
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(2) 見積書その他の契約の相手方当事者の作成した文書等に基づく申込みであることが記載されている当該申込書等。ただし、契約の相手方当事者が別に請書等契約の成立を証明する文書を作成することが記載されているものは除かれます。
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(3) 契約当事者双方の署名又は押印があるもの
上記をざっと要約すると、次に挙げる3項目の発注書は「取り消せる発注書ではなく」「契約書も兼ねている」ということ。
そう「発注書であるけれど契約書でもある」という、ハイブリッド型も広く一般的なんですね。ひっかかりたくないところですね。
では改めて、上記の国税局の注意喚起をカンタンにして、以下に訳してみます。
①一方の申込みで自動契約になるもの
その発注書に「約款や規約に基づく申込み」であることが明記されており、発注側が申込んだだけで自動的に申込みなると記載されているもの。
②申込みであることが記載されている
受注側が作成した見積書等の書面に基づく申込みであることが明記されているもの。
③双方の会社の署名または捺印がある
発注側・受注側双方のサインや印鑑があるもの。
上記3つを見るだけでも、なかなか地味に仕掛けがありそうです。
決して油断はできず、とても注意が必要なわけですね。
発注書を書かせる「裏の狙い」とは?
もしあなたが、例えば自社のホームページをどこかのウェブ制作会社に「発注」する際。
ウェブ制作会社の営業は「では、社内の制作ラインを抑えるので、発注書を先にお送りください」「予約書みたいなものなので(笑)とりあえずお書きいただけると」という軽微な説明をすることがあります。
そして、とてもシンプルな用紙を渡される。そこには「◯◯社にホームページ制作を発注します」「日付」「会社名」くらいしか記載がなく、見るからに簡易的なモノ。
しかし、ここでその営業担当は「法的拘束力は一切ありませんので、もし気が変わったら取り消せます」とは言いません。細かい説明をしないのです。なぜでしょうか。
つまりこれは、書面に署名し、捺印をさせることで「発注への意思を固めさせる」「あたかも法的に契約しているような感じにさせる」「後戻りしにくくさせる」という狙いがあるからなんですね。
これは、心理学なんかでも語られるところですが「約束したことに一貫性を保とうとする人間の属性」につけこんだもの。あとから「やっぱりやめたい」と言いにくくする。「もう発注しちゃったし」そんな心理を狙ったもの。
しかし実際に「簡易的な発注書」の場合、そこに法的拘束力はありませんから、プレッシャーに感じる必要はありません。取り消したければ、連絡してナシにしてもらうことは可能なのです。
※先述の「要注意の3パターン」には気をつけて。双方の合意が書面上で交されてしまえば、いくらその用紙の名称が発注書でも「契約書」となり「契約成立」です。
安易にサインせず、法的効力を確認
今回は簡易的な発注書には法的拘束力がないこと、しかし「3つ」の重要な例外、注意点があることを解説しました。
制作会社によっては、説明を曖昧に提示し「とにかく書かせる」という誘導に長けているところもあるため、まずは安易にサインしないことが大切。一見簡易的に見えても、そこにどんな仕掛けがあるかわかりません。
そしてサインする前に、法的効力の有無を弁護士に依頼し、リスクヘッジをしておきましょう。もちろん契約するまでは着手金や手付金も払う必要も全然ありません。
発注書とは、受注する制作会社の営業が「案件を受諾した」ことを社内で証明するために必要であったり、客に後戻りをさせないことを狙ったもの。つまり、客側には何もメリットもありませんので、あせってサインする必要はないんです。
こちらとしては、口頭で意思表示だけをし「では契約書を持ってきてください、中身を確認するので」だけでも済む話なんですね。ただし、発注書の何倍もトラップだらけの契約書には、さらに注意なのは言うまでもありません。
相手方の営業は「発注書を書くと優先的に制作ラインを確保できる」だのなんだの言ってきますが、全て、受注したいだけの営業トークですので冷静に受け流しましょう。その場合は、
「そうですか。では発注はやめようと思います」
と、言ってみてください。営業は態度や言葉を方向転換し「社内調整したので」「書かないでもOK」「契約書だけでいいです」と、180度態度を変えるでしょう。
しかしまあ、ふっかけてきている時点で、その会社と取引きは止めたほうがいいでしょう。