ゲンナリしかない「会社のスローガン」
年度の始めやWEBサイトのリニューアル時に、会社が新しいスローガンを発表することがあります。
例えば、
「今期は基本に立ち返り『お客様第一主義』です」
「笑顔のある毎日という想いを込めて『Good Smile,Good Life.』に決まりました!」
会社員にいると、一度くらいはこのような、げんなりするキャッチコピーのお披露目に遭遇することがあるでしょう。
果たして、このようなスローガンというのは社員の意識向上にどれくらい役に立つものなのでしょうか。
結論、影響は皆無です。
なぜ効果ゼロのスローガンが誕生するのか?
こういったスローガンは、社長はもとより幹部や担当者が、ブランディング企画の会社やホームページ制作会社と話をし決めていきます。
もちろん、企画する会社は金になるのでこういった意識向上に寄与するという「商品」の効果と成功例を並べ、いかに必要であるかをプレゼンする。もはや「幸せになる壺」を売るのと変わりありません。意味のないブランディングにお金を払ってはいけません。それなら社員に1,000円づつ、1万円づつなど臨時ボーナスを配ったほうがモチベーションが上がりますよ。
違ったパターンでは、業者を挟まずに自社の社員にアンケートを取ったり、数名のプロジェクトメンバーで社内の意見を取りまとめてスローガンを決定することもありますね。この場合は壺を買うような悪徳商法こそ回避できていますが、そこに時間をかけるほど会社がヒマだった覚えは誰にもないはずです。やらされるほうもたまったものではないわけです。
こうして「なんとなくあると良さそうだから」完成したスローガン(タグライン、キャッチコピーなどとも言われます)はWEBサイトであったり、会社のノベルティグッズなどにも刻印されます。
しかしブランディング会社やWEB制作会社が言うような「社員の意識向上」「ステークホルダーへのアイデンティティの訴求」なるものに効果があるのかは、この記事を読んでいるあなたが自身の経験に照らしわせてみると答えは出ていますね。
それでも不安になるのが上層部
「最近、社員の士気が低い…」
「みんなが一丸とならない…」
こんな不安を持つ経営者や幹部社員は日本全国、いや世界中にたくさんいます。ここで「手っ取り早く」なにか打ち出したことにする気にさせるのがスローガンなんですね。
ここにうまく介入するのが、ブランディングのプロデュースを得意とする制作会社やコンサル。「社内向けはもちろん、外向きのブランディングとしても必要」とくるわけです。
確かに、外向きにはなにか「コンセプト」はあったほうがいいですね。でもそれってスローガン?キャッチコピーとごっちゃになっています。こういう「さりげないカオス」は素人にはなかなか瞬時にはわからないもので「やはり、企業としてスローガンはないとな…」という展開になることは多々あります。
もはや企業が一言、耳障りのいいスローガンを打ち出したところで響く時代は昭和で終わっていると言ってよいでしょう。
昨今の企業スローガンの例
では、ここで最近の有名企業のスローガンを、ツッコミと共に見てみましょう。
トヨタ自動車「笑顔のために。期待を超えて」
トヨタのサイトでは「人々を安全・安心に運び、心までも動かす。」とのこと。「心までも」か…
日産自動車「人々の生活を豊かに。イノベーションをドライブし続ける。」
「このパーパスは、常に我々の活動の中心にあります。 」と日産のサイトには書いてあります。本当でしょうか。あと「パーパス」って急に英語で言われてもわからん、、、
ユニクロ「服を変え、常識を変え世界を変えていく」
ユニクロすなわちファーストリテイリング社のPDFには、上記のように書かれています。企業姿勢が毎度問題になる会社なだけに、スローガンが虚しく響きます。
村田製作所「Innovator in Electronics」
「国内外のムラタグループ社員全員が共有するスローガン」と村田製作所のサイトにはありますが、、、、「社員全員」か…ぜひ社員全員の本音を聞いてみたいものです。
いかがでしょうか。企業の印象が変わったり、ワクワクはありますかね。ないですよね。
内側にいる社員さんたちも、これを見て「よしやるぞ」となってないでしょう。株主がこれを聞いて期待する風景も想像し難い…。
スローガンがあること自体は否定しませんが、ここに大金をかけたり、社員に浸透することを期待し異様に時間をかけたり、願いを込めたりするのは意味ないと考えます。
スローガンにはお金も時間もかけず効果も期待しない
社長や上層部がこだわって決めた「言葉」に、一般の社員が心躍り、自身の会社に誇りを持ち直すかと言うと、日々の仕事で「それどころではない」「勝手にやっててくれ」というのが本音。
もちろん、聞かれれば「これ、いいですね」くらいは言うでしょうけども。
ぜひとも、スローガンを決めた上層部や制作会社に「あなたが一般社員だったとき、会社のスローガンが決まって労働意欲が高まりましたか?」と聞いてみたいところ。
ここで問題にしたいのは、こういった会社のブランド向上のための努力を「全て意味がない」という結論ではなく「現実的な視点を持つ」ということです。
「お金と時間をかけてまでやることでは全くない」
「効果を期待するのがナンセンス」
「あくまで会社の装飾を整えたに過ぎない脇役」
という現実を知っておくことが大事。
会社に浸透などしないのがスローガン
会社にスローガンがないのは寂しいかもしれないですし、目標がない会社というのも問題です。そういった理由から、上層部がそれっぽいものを作ること自体は必要という意見も正しいでしょう。
ただ、あなたが何らかの社内グループのリーダーや部門長、あるいは社長だったとして。
「スローガンにもあるだろ」「目標を掲げたじゃないか」なんていうお説教が成立するほど、会社には浸透しない、するわけない現実を知っておきましょう。
特に個人主義のこの時代、若い世代にスローガンごときで求心力を発揮できるわけはないのです。
会社の魅力は、スローガンなどでは上がることもなく、時間をかけて決めても、誰も気にしないものなんですね。